日常生活で避けられないゴミ出しは、多くの自治体で朝の回収時間が設定されており、夜遅く帰宅する人や夜勤がある人にとっては、朝早くにゴミを出すことが困難な場合があります。このため、回収日の前夜にゴミを出すことを検討する人も多いですが、この夜間のゴミ出しは自治体の規則に反して違法となる可能性があります。
ゴミ回収日の前夜にゴミを出すことが違法かどうか、夜間にゴミを出す際にどのようなリスクが伴うのかについて、詳しく説明します。
直接的に言えば、ゴミ回収日の前夜にゴミを出す行為は、法律違反に該当する可能性があります。これは、「廃棄物処理法」という法律に基づくもので、同法の第16条では「無断で廃棄物を捨てる行為」を禁止しています。
さらに、「市町村による一般廃棄物の収集、運搬、及び処理への協力義務」も規定されており、ゴミの分類や出し方に関する地方自治体の規則に従うことが求められています。
正式名称を「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」とする廃棄物処理法は、ゴミの適切な処理方法や公衆衛生の維持に関する規則を定めた法律です。
この法律の枠組みのもと、各地方自治体はゴミの分類方法や回収スケジュールを詳細に定めています。これらのルールに違反する行為、例えば夜間にゴミを出すことは、法的に違法行為にあたります。
廃棄物処理法は、事業者だけでなく一般市民にも適用されるものであり、違反した場合には法的な罰則が課される可能性があります。実際に、一般の女性がショッピングセンターの駐車場に家庭ゴミを不法投棄した事例で書類送検された例があります。この法律に違反した場合、最大で5年以下の懲役又は1千万円以下の罰金が科されることがあります。
自治体が指定する回収日や時間に従わずに夜間にゴミを出すと、ゴミが散乱する原因になったり、近隣住民との間で問題が生じるリスクがあります。夜にゴミを出すことによって生じうる問題点を以下に示します。
夜間にゴミを出す際に最も注意すべき点は、猫やカラスによってゴミ袋が荒らされることです。猫やカラスがゴミ袋を破って中身を散乱させる場面は、多くの人が一度は目撃しているかもしれません。
特に、生ゴミや食べ残しを透明なゴミ袋に入れた場合、猫やカラスがこれを見つけて漁ることがあり、注意が必要です。これらのゴミが道に散乱すると、ハエや害虫の誘引につながり、公衆衛生上の問題を引き起こす可能性もあります。
夜間にゴミを出すことに伴うリスクの一つが、放火による火災です。放火は故意に火をつける犯罪行為で、このような行為は違法です。放火犯は特に深夜から明け方にかけて活動することが多く、燃えやすい可燃性ゴミや積み重ねられた雑誌、新聞などが放置されていると、これらを標的にする傾向があります。
もし多くの人がゴミの回収規則を無視して大量にゴミを出すようなことがあれば、ハエや蚊、その他害虫の大発生を引き起こし、結果として伝染病が広がるリスクが高まります。これは近隣住民の健康に対して深刻な懸念をもたらします。
また、「公共の利益に反して不当にゴミを捨てた者」を処罰する軽犯罪法の第1条27号の規定があります。これにより、夜間にゴミを出す行為が公共の迷惑とみなされ、「軽犯罪法」違反となる可能性があります。
夜間のゴミ出しは、特に夏場に生ゴミや食べ残しの臭いが周囲に広がることで、近隣住民への迷惑となり、結果的に近所トラブルの一因となる可能性があります。
特に新しくその地域に引っ越してきた場合は、自治体のゴミ収集規則に加えて、地域内での非公式なルールや慣習(例: ゴミ収集後に散水するなど)にも留意すると良いでしょう。ゴミ出しは毎週行われるものであり、日頃からの良好なコミュニケーションが近隣トラブルを避ける鍵となります。
ほとんどの自治体では夜間のゴミ出しを禁止していますが、福岡市では条例により夜間のゴミ出しを認めている珍しい例です。ここでは、燃えるゴミの回収が週に2回、燃えないゴミや空き瓶・ペットボトルの回収が月に1回、指定された曜日の日没後から深夜12時までの間にゴミを出すことが義務づけられています。これにより、夜間にゴミ収集車が活動し、悪臭問題やゴミの動物による荒らしを防ぐ効果があります。
さらに、朝の時間帯は通勤や配送トラックなどで道が混雑するため、ゴミ収集作業が困難になりがちですが、夜間回収により作業時間の短縮や道路混雑の緩和が図られています。
夜間ゴミ出しの制限がある場合、一部の人がスーパーやコンビニに家庭ゴミを持ち込むことがあります。しかし、これは店舗にとって追加のゴミ袋代や処理作業の手間増加など、余計なコストや迷惑をかける行為です。
家庭ゴミを捨てさせないために「家庭ゴミ禁止」の注意書きをゴミ箱に貼る店舗も多く、店の方針に反して家庭ゴミを持ち込むと「偽計業務妨害罪」に問われる可能性があり、3年以下の懲役や50万円以下の罰金が科されることがあります。
さらに、持ち込まれたゴミの量が多い場合には「威力業務妨害罪」が適用されることもあり、これにより有罪判決を受けた場合も3年以下の懲役または50万円以下の罰金の罰が課されます。
自治体が定めるゴミ出しの指定日時や夜間ゴミ出しの合法性、そして夜間ゴミ出しに伴うリスクについて説明しました。
要するに、ゴミの排出方法に関しては、国や地方自治体が具体的な法律や条例で規制しており、これらの規則に従うことが求められます。夜間のゴミ出しは、近隣とのトラブルや放火といった犯罪へのリスクがあるため、指定された時間外のゴミ出しは避けるべきです。